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2011年奈良(1)-東大寺 [寺・仏像など]

去年、物心ついてはじめての奈良を、

元興寺の天井裏見学
http://msrusano.blog.so-net.ne.jp/2010-11-06

という、お寺仏像好きにしても極めて地味な体験で飾った小六の息子。
今年の奈良も連れて行くことにしたので、今回はせめてお友達に話せる場所へと、
まず東大寺へ向かいました。

秋に25年以上通って去年がはじめての本格的雨の奈良でしたが、
今年もまた、雨模様。
息子が雨男なのは決定したようです。
登大路の緩やかな坂道を、既に飽きた疲れた帰りたいを連呼する子供をなだめつつ、
鹿にせんべいをやらせたりなどしながらゆっくり登りきり、
若草山を遠望する参道を左手に曲がると、もうすぐそこに、ゆったりと大きな南大門。
この頃からいよいよ雨粒も落ちてきて、息子の不機嫌が一層つのり、
せっかく習いたての「運慶・快慶」の仁王像だと教えても、
見る気がまったくない様子。
困ったものです。

ちなみに、かつては、右の口を閉じた吽形が運慶、左の口を開けた阿形が快慶、と、
子供に教えやすかったのですが、昭和から平成にかけての解体修理で発見された納入品や墨書から、
そんな簡単なものではないとわかり、私などではよく理解も叶わないので、
とにかく「運慶・快慶が作った像」と説明するしかなかったことを白状しておきます。


門を越えてすぐ、左手に、気になっていた東大寺ミュージアム。
(東大寺総合文化センター http://culturecenter.todaiji.or.jp/ )
今年10月10日に新規開館したばかりの、寺宝などの展示施設です。
あの境内にコンクリ造りの「ミュージアム」とはどんな殺伐とした風景になっているのかと、
密かに心を痛めていたのですが、一目拝見してすぐ、
一観光客の浅はかな心配を恥じました。

木立に見え隠れしたのは正倉院正倉や、唐招提寺金堂を思い出させる、
低くておおらかな、寄棟造の屋根。
柱も壁も雨の境内に溶け込む様で、違和感がないどころか、
うっかりすれば大きな寺院によくある塔中や会館と思って気づかず通り過ぎそうです。
図書館や収蔵庫、研究施設も備わっているそうなので、
全体がどんな造りになっているのかはわかりませんが、少なくとも、
参道から眺めるには、気持ちの良い風景でした。

早速中へ。
予想外にこじんまりした空間。
ほの暗い中、LEDの光と反射のおさえられたガラスに守られて、
まず目をひくのは誕生釈迦仏立像及び灌仏盤。
小さなお釈迦さま像が、大きな平鉢の中で右手を上げてにっこり立っているあれです。
それから、直径6センチほどの銀製鍍金狩猟文小壺。
これは東大寺金堂鎮壇具のうちのひとつです。
この2つの展示は、去年東博の「東大寺大仏」展にも来ていて、
やはり照明が工夫されていましたが、その時よりよほど良く線刻が見えます。
賑わっているとはいえ、東博の混雑とは比較しようのない人の少なさもありがたいです。

ここに並ぶ一連の鎮壇具の中に、
「熟年の男性的な歯との所見がある」(カタログより)人の歯が一本あり、
これが聖武天皇のものかもしれないと言われてもいることを他の方のブログで知りました。
実は、とにかく子供のことを考えて、見たいものだけと思い、
鎮壇具はさらっと流してしまったので、この歯、見ていません。
残念です・・・。
(聖武天皇の御歯であるかもしれない、ということは出典確認していません)

左の壁に、金堂前に立つあの金銅八角燈籠の火袋羽目板のうち、
昭和37年に盗難にあって翌日破損した姿で発見された1枚。
バッ子を手に無心に衣をひるがえす音声菩薩の姿を見るにつけ、
昭和37年という、歴史上で見ればただ今とほぼ同時代に、
盗難・破損などと恥ずかしい行為のあったことが、情けなく申し訳なく思えます。
(バッ子=バッは、跋の偏が金になった字。ばっし。
金属製の小さな鍋蓋みたいなものを両手に持ち、打ち付けて鳴らす、様に見える打楽器です)

この第一室にはいずれ昨年わかって話題となった、陽剣、陰剣も加わるそうですが、
今は写真や解説板が置かれています。
他に伎楽面など並んで再奥に西大門勅額。


次の第二室、いよいよ、不空羂索観音立像と、日光菩薩立像、月光菩薩立像です。
新聞の報道写真で見た時は、大きな展示ケースの中にきらきらしく立つ姿が、
何かうそ寒い様に寂しく見えたのですが、
ここでもまた、甚だしい思い違いを反省させられる嬉しい結果となりました。

思っていたよりもずっと身近で小ぶりの展示ケースに立つ3つの像は、
光の加減かずいぶん温かな空間を作り出しています。
宗教とか美術とか、何かそういう枠など超えて、
ただただ、大切にされているという印象です。
そのためでしょうか、あの厳(いかめ)しさで一頭地を抜く不空羂索観音像が、
夢紫五色掲示板の常連さんのご感想にあった、
「方向によっては優しい女性のお顔にも見え」たというのを、
そんなばかなと訝っていたのが、実際拝見すると、まさに女性的、
ひどくたおやかに見えたので、我が目を疑いました。

三月堂では光背と宝冠に荘厳され、古い空間の中、最大の威厳を示し続けていたのが、
このミュージアムでは控え室に戻った様に、化粧を落とし、ほっと気を緩めているのでしょうか。
最も男性的と思っていた像が、化粧(けわい)のすべてを落とせば女性だったという驚き。
6本の腕など四月堂の千手観音像を思い出させる、
うねうねとなまめかしい色気まで感じました。

総じて展示に不満はなかったのですが、唯一、
この最も主要な不空羂索観音立像の展示ケースが四枚ガラスになっていて、
観音像の正面がガラスの継ぎ目となっていたのが、ひどく気になりました。
反射の少ない綺麗なガラスなだけに、何故こんなことに、と残念です。
中央に一枚ガラスをもってこれなかったのでしょうか・・・と、
ぶつぶつ思っていましたら、これも他の方のブログで「噂話」として見たのですが、
いずれ観音像が修理を終えた三月堂に戻った後には、
ここに(日光・月光とともに)弁才天立像、吉祥天立像が並ぶのではないかとのこと。
なるほど、それなら、4枚ガラスのわけも納得がいきますね。
(出典・噂の出所など調べていません)

あとは第三室で子供になんとか二月堂本尊光背と弥勒仏坐像(試みの大仏)を見せて、
超特急で外へ出ざるをえませんでした。
秘仏とか、大仏さまのお試し版などという単語には少し興味を示してくれるのですが、
もうこの時点で、他は全然だめでした。

カタログ表紙は素の不空羂索観音、

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裏表紙が後姿だったのが、何故か愛しく感じました。

111111nara02.jpg


チケットは大仏殿と共通だと少し安くなります。

111111nara03.jpg


☆東大寺ミュージアム開館記念特別展「奈良時代の東大寺」は、
カタログによれば、
2011年10月10日(月・祝)~2013年1月14日(月・祝)になっています。
(途中展示替えあり)
しかし、公式ホームページには終了日の記載がありません。
同時に、東大寺公式ホームページに、三月堂の修理期限が、
2012年12月予定だったところを、須弥壇の予想外の劣化により、
2013年3月末日に延長した旨注意書きがありますので、
何かそのあたりの事情で特別展終了時期にも変化があるのかなと思いました。
訪問をお考えの方はご確認下さい。



外へ出ると雨もしとしと降りになっています。
とにかく大仏を見せれば興味をもってくれるかと、大仏殿へ。
手前の八角燈籠でさっきのミュージアムの話をしますが聞く耳持たず。
その上、あろうことか、大仏殿の中へ入っても、

「大仏って、どれ?」

・・・目の前にどーーんと座っているでしょう!と言っても、

「あの、金色のたくさんいるやつ?」

そ、それは光背の化仏!!!(大焦)

どうやら息子にとって大仏とは、黄金のきらきらしいものだったらしく、
現在の大仏の姿はまことに拍子抜けだった様子・・・。
ただ、手前に展示されていた、台座蓮弁の模型には興味を持ったので、
描かれている当時の世界観を説明しようとして・・・
あまりのうろ覚えに涙をのみました、勉強したいと思うのはこんな時ですね。


その後実は、二月堂・三月堂方面を断念し、
子供が社会で習って興味を持ったというので正倉院の正倉と、
私が是非見たかったので戒壇院へまわったのですが、
なんと前者は今年から平成26年まで整備工事のため外構見学中止、
後者は法会のため10日まで一般拝観中止・・・呆然としました、
きちんと事前に調べるべきですね。


☆なお、この正倉院正倉整備工事は、期間中5回の見学会が予定されているそうです。
第一回が、来春、平成24年3月16,17,18日にあります。
申し込みは往復はがきのみ、締め切りは12月9日だそうです。
詳細は宮内庁ホームページをご覧になってください。


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コメント 2

★ASA☆

東大寺ミュージアムに行かれたんですね!
僕もどうしようか悩んだんですが、特別開扉の寺巡りの方を選んじゃいました(^^;

こちらの方も、仏像館同様なかなかいい感じみたいですね♪
まるささんの日記読んでて、早く見に行きたくなっちゃいました(笑)
by ★ASA☆ (2011-11-14 23:18) 

まるさ

♪ ★ASA☆さん、東大寺ミュージアムの開館記念特別展は、
カタログによれば再来年のお正月までやっていますから(笑)、
人の少ない時期にでも、ゆっくりご覧になってください!
展示替えもありますが、同じものが交互に出たり出なかったりするものも多く、
一度見損なったら二度と見られない、ということは少なそうです。

それにしても、不空羂索観音像の正面にガラスの継ぎ目があるのは、
今思い出しても残念なのです、ご覧になってどう感じられるか、
是非ぜひ教えてください、そんなに気にしなくてよいのでしょうか・・・(笑)。
by まるさ (2011-11-15 16:46) 

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