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埼玉の古代寺院 [美術館・博物館]

埼玉県立歴史と民俗の博物館
「仏教伝来 埼玉の古代寺院」
会期:2010.10.9(土)~11.14(日)
訪ねた日:2010.10.13
書いた日:2010.10.14


昨日の朝、新聞を眺めていたら、ふと目に止まりました、
深大寺の銅造釈迦如来倚像の写真。
お?と記事を読んでびっくり!
地元の博物館におでまし中ではありませんか。
ちっとも知りませんでした!
私が行かないで誰が行く!!!というくらいの意気込みで、
早速身支度をして出かけてきました。

JR大宮駅から東武野田線各停で2駅、大宮公園駅で降り、
住宅街を5分ほど歩くと大宮公園内のこの博物館につきます。
が、博物館手前の道に信号機がなく、
すぐ近くの踏み切りを渡って行き来する車が途切れないため、
渡るのに妙な苦労・・・道がこんなに渡れなかったのって、
信号などの完備した最近ではとんとなかったことで、なんだか新鮮でした(笑)。


さて、その横断待ちの間に撮った博物館の写真が、これ。

101013rekihaku01.jpg

特別展の横断幕がかかっています。
最近都内の綺麗なところに行ってばかりだったし、
同じ公立でも、千葉も、以前行った平塚もとっても綺麗だったので、ちょっと不安。
でも、これは裏側でした。
正面はこんな感じ。

101013rekihaku03.jpg

・・・うーん・・・ぱっとしません?(笑)。
でも、前庭には弥生式(手前)と縄文式(奥)の住居が復原されていて、
公園内の森深い感じが素敵。

101013rekihaku02.jpg


入り口はこんな感じ。

101013rekihaku04.jpg

ちょっと、今改修中の都美の昔の感じに似ています。
中に入っても印象に近いものがありました。


さて、特別展「埼玉の古代寺院」。
新聞に出てしまったので混んでいるかも・・・とはあまり心配しなかったのですが、
心配するも何も、展示スペースにいるお客さんは、私のほかに初老の男性ひとりきり。
・・・
すいているのはとってもとっても嬉しいのですが、こ、これはいくらなんでも・・・。
各コーナーにいる係の方が、私たちの足音に驚いて飛びのくのがちょっと切なかったです。
お昼近くにはもう少し増えましたが、それでも、一度に10人くらいでしたでしょうか。


この博物館、作りも展示も、昔ながら。
流行のLEDライトの美麗な照明や、
「ミュージアム」と呼ぶのが相応しい洒落た展示、一切なし。
ガランと大きなガラスケースに、淡々と展示物が並びます。
もちろん蛍光灯と白熱灯の照明が、わずかに波うつガラスにこれでもかと反射しまくって、
展示物を見ているのか、背後の風景を見ているのか、自分の影なのかわからない状態。

でも、そこが良い!
そこがとても良いのです。
抜けた天上がとても高く、小細工なしの壁や床は今ではむしろ、
重厚にすら感じます。
独特の匂いのする「博物館」という場所に安逸を感じる方、
綺麗になった「ミュージアム」たちについて行けない方には、
ぜひぜひ、おすすめです。


そんな妙な感動で見てまわった展示。
埼玉県内のみならず「武蔵国」各地のお寺、寺院址の発掘成果などから、
関東での仏教の広がりを物理的にも実証していくという、
とても内容のあるものでした。
勉強している方には見逃せないものだと思います。

いきおい展示品は古瓦などの出土品が多く、
もともと深大寺像にひかれて出かけてきた私にはうまくここでご紹介もできないのが残念です。


その深大寺像、部屋の隅のとりわけ薄暗い角に、
普通は立像を納めるのによさそうな大きな展示ケースを斜めに設置し、
その中に座っていました。

ケース床面が低いですから、83センチほどのお姿は完全に私の目の下。
その時のお顔はたいそう飄々としていて、我関せずの様相です。
なんだか、含み笑いで無視されているような、
気づいてはいるのに、こちらを見てはくれないようなもどかしさ。

2009年夏の終りに深大寺を訪ねた時は、陽の影でどうしてもよく見えなかったお顔ですが、
他に見る方もいないのを幸い、ケースに張り付いて見ていれば、
鼻梁から眉へ跳ね上がる端正な線も、二重に見える優しい目の線も、
ぽっちりと柔らかな小さな口唇の線も、すっきりとまとまった頭部の鏨の線も、
何もかもがはっきりと、手にとるように良く見えます。

香薬師像と似ていると聞きますが、写真で見る限りは、
香薬師像よりもっと端正で研ぎ澄まされた印象です。

(香薬師=奈良の新薬師寺に安置されていて昭和18年に盗難にあって以来所在不明の白鳳仏。今年1年レプリカが公開展示されているそうです)


でも、これでは、私の気持ちがおさまりませんので、
これまた人のいないのを幸い、ガラスケースの前で、ゆっくりと膝をついてしゃがみ、
見上げる様に拝観してみました。

と!

すーっと視点が落ちるにつれ、そのお顔は見る見る上へと振り仰がれ、
いずれ私の膝が地につき動きが止まる頃には、
先程上から目線で拝見していた時とは、まったく別の表情が出現しました。

何でしょうかこの、高邁な華やぎは。
香りたつ気高さに陽の光そのものの様な清清しい明るさは。

それから長い胴に目をすべらせ、
二指の折れて痛々しい施無畏の右手、
膝にぽとんと落とされた様な与願の左手を次々見ていく頃には、
何とも言われぬものに心触れて、
また私は涙を溢れさせる他ありませんでした。


その後も何度も戻っては膝をついてきたので、
係の方をはらはらさせたかもしれませんね、すみません。


さて、とても有意義だったこと。
関東には、白鳳仏が3体伝存しているそうで、
そのひとつが勿論深大寺像ですが、
もうひとつが、東京、国分寺市の武蔵国分寺址から出土した、

銅造 観音菩薩立像

です。
これのレプリカが展示されていました。
像高28センチほどの、いわゆる小金銅仏。
東博の法隆寺国宝館に並んでいるのと似寄りの作風のものです。
出土品のためかお顔など磨耗が勝っていますが、
小さくても品格のあるのは、他の小金銅仏と同じでした。


もうひとつが、千葉、印旛郡にある龍角寺にある、

銅造薬師如来坐像 の頭部

こちらは写真で掲示されていました。
解説には、興福寺の山田寺仏頭に通じる作風とありましたが、
少し肉厚の顎のあたりは、もっと似た像があった気にさせます。
唐招提寺あたりで見たことがあるような・・・。

この龍角寺、行ってみたいと調べたら、かなり行き難そうだったので、
写真でだけでも拝観できて、非常に満足しました。


以上、関東の白鳳仏三点に関することですっかり充実したのですが、
もう一点、素晴らしいものが出ていました。
平家納経、久能寺経と並んで日本三大装飾経に数えられる、

国宝 慈光寺経
(慈光寺蔵 法華経一品経阿弥陀経般若心経 三十三巻)

こんな、人もいない展示室で見るものとは思われない、
さんざめく装飾と素直な文字の美しい、素晴らしいものでした。



深大寺像の余談です。
ここの解説パネルの関東の白鳳仏の説明で、
武蔵国分寺址出土の像が「釈迦如来」と書かれてしまっていたので、
(おそらく写植の方が深大寺像につられてしまったもの)
係の方にちょこっとお知らせしたら、学芸員の方が出てきてくれました。
私よりお若い小柄な女性だったので、勇気を出してちょっとお話を(笑)。

深大寺では、ご住職が展示の趣旨に賛同してとても快く貸与してくださり、
普段お寺では拝むことのできない、左右や背後も、見えるようにしてほしい、
とおっしゃられたそうです。

特に、大正時代の旧国宝指定に際して吉田包春に依頼した春日厨子や台座のうち、
台座が、向かって左側からよく見えます。
よくと言っても老眼開始!の私の目はうろうろしてしまいましたが、
木製で、でしゃばることなく繊細に施された漆の装飾の美しいものでした。

会期中、展示替えもあるそうですが、
深大寺像は通しで展示だそうですので、
ぜひ、見に行ってみてください。



なお、去年深大寺を訪ねたときのことは、夢紫五色の掲示板に簡単に書いてあります。

夢紫五色 掲示板
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