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国宝燕子花図屏風 [美術館・博物館]

根津美術館
「新創記念特別展 第5部 国宝燕子花図屏風 琳派コレクション一挙公開」
会期:2010.4.24日(土)~5.23(日)
訪ねた日:2010.5.14
書いた日:2010.5.15


五月晴れの一日、気になっていた根津美術館を訪ねました。
昨秋、大規模に新装なっての開館を記念して連続で開催されている特別展の、
今回は第五部。
根津美術館の最も著名なコレクション「燕子花(かきつばた)図屏風」が4年ぶりに出ます。
ちょうど季節ですしね^^

東博あたりの大混雑にはほど遠く、
10時開館のところ10時20分頃に到着すれば、並ばずに入館できました。
(12時すぎに出てくる頃は、50メートルほど並んでいました)


尾形光琳筆、燕子花図屏風(18世紀)。
・・・若い頃から何度か見ているのですが、実は・・・
どうしても、あまり素晴らしいと感じられない作品のひとつです。
根津といえば燕子花図屏風、国宝、大人気、光琳の代表作!というものなのに、
感じるものが乏しい自分の感性の貧しさが恨めしくなります。

以前見たのがいつだったか・・・少なくともいくつかは年をとりましたから、
また別の見え方がするかもしれないと希望をもって対面したのですが、
やはり、のっぺり・・・という印象。

根津美術館のサイトにも、
「濃淡の群青と緑青によって鮮烈に描きだされた燕子花の群生」
「リズミカルに配置された燕子花」
「顔料の特性をいかした花弁のふっくらとした表現もみごと」
と解説されている通り「のっぺり」という印象とは程遠いはずなのに。

もっとも、東博ほどではないといいつつ、
会場内は充分混雑していましたから、
どこの屏風鑑賞でも最大の欠点、
「離れた位置から全体を見るのは居並ぶ人が邪魔で不可能」
という状態でしたから、
もし、静かな環境で本当にゆっくり全体を見ることができたなら、
もしかしたら、違う何かが見えてくるのかもしれません。

そんな時に巡りあえるのを楽しみにしています^^



その他の作品は「琳派コレクション一挙公開」とある様に、
伝宗達、光悦、尾形兄弟、抱一、其一と、数は多くないですが充実しています。

特に、普段美麗な作品ばかり記憶に残る抱一の小ぶりな墨絵は、
ちょっと意外で面白かったです。

それから、其一の「夏秋渓流図屏風」。
解説版に「アメーバの様な」と書かれていましたけれど、
渓流というには粘着質に踊る鮮やかな群青の水の流れにそって、
コケの目立つ樹木が密度濃く描かれ、
その合間合間に、素晴らしく写実的な百合が咲き乱れています。
ここまででも充分迫力があって印象深いのですが、
いったい何故か、樹の陰から顔をのぞかせる笹が、
こう・・・お弁当箱に入れるちょっと豪華な飾り、とでも言いたくなるほどの、
写実とは正反対のペッタリテカテカの装飾的意匠になっているのです。

この絵の前で、何故だ!?と考えることに、きっと意味はないのだと思います。
私には、其一という人の狂気がそのまま伝わってくるような気がしました。
生きにくかったんじゃないだろうかとすら・・・。


さて、そんな有名な人たちの作品の中にあって、
なんとなく気に入ってしまったのが、
尾形宗謙作「新古今和歌集抄」。
繊細な装飾のほどこされた、柔らかな薄茶色の料紙に書かれた書です。

書、まるっきりわからず、これも一文字とて読めません(自慢になりませんね!)。
なのに、すごく豊かな抑揚で均整がとれていて、
とどのつまり、見ていて、綺麗だなーと思えたのです、読めないのに。

尾形宗謙さんは、光琳・乾山兄弟のお父さんだそうです。
見ていて、なんとなく、芸術家の苦悩ではなく、
商売やってる人の健全な明るさを感じました。
事実、京都の裕福な呉服屋さんだったようですね。

この書を見て、はじめて、連綿体って、良いなあ・・・と思いました。
なんというか、別に芸術家を気取っていなくても、
(いや、本当は気取っていたのかもしれませんが!)
こんな美しい文字を書いていた江戸時代って、やはり教養の底が深いと思いました。
ひきくらべて、今私たちが書いている楷書体、一文字一文字ばらばらの文字、
なんだか風情がないなあと、寂しくなってしまいました。



さて、平常展にあたるコレクション展の部屋では、
茶室のある展示室6で「燕子花図屏風の茶」という特集をしてました。
燕子花図屏風をお披露目する際の茶会の道具立てが再現されています。

その中にあった、
「茶杓 共筒 銘 五月雨 /小堀遠州作」
がちょっと興味深かったです。
茶杓の柄に、ぽつんとごく小さな虫食いの穴があるのを見つけ、

「星ひとつ みつけたる夜のうれしさは 月にもまさる さみたれのそら」

という古歌から「五月雨」の銘をつけたのだそう。
虫食い穴はガラス越しに見たところ径0.5ミリもないくらいの、ちまっとまん丸。
こんな穴に、愛情をそそいで古歌を持ち出してまで名前をあげる、
その風流を思いやればやはり優しく幸せな気持ちになれます。
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