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円空こころを刻む [美術館・博物館]

埼玉県立歴史と民俗の博物館
「円空こころを刻む-埼玉の諸像を中心に」展
会期:2011.10.8(土)~11.27(日)
訪ねた日:2011.10.14
書いた日:2011.10.14


なんとなく無性に博物館へ行きたくなり、
都内まで出るのは無理なので地元の博物館へ行ってきました。
円空仏展をやっていました。

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あとで調べたらぴったり1年前に「埼玉の古代寺院」展に行っていたので
この季節、何か呼ばれるものがあったのかもしれません。


さて、円空仏。
かつては、ザクザクとナタを入れただけの「荒い」作品、
発願12万体の完成のためにはいた仕方ない「雑な」完成、
そういう印象をもっていました。
その荒削りさが素朴で、原木の味わいを残して良いのだろうと。

なのに今日見に行くと、大小あわせて170体ほどのそのどの像も、
みなとても手が込んでいるように見えました。
いえ、もちろん、天平仏の様な、
近代的な美意識をも満足させ得るものとは違います。
木の中の仏をどうえぐり出すかと考えに考え抜いて、やがて違うことなくノミを入れた、
その作業が見せる不思議な手の込み様を感じたのです。
まさに「こころを刻む」ものでした。


かつて、稚拙な顔の彫り、均衡や安定感を無視した体躯、
ささくれた様なノミあと。
それが親しみやすくて人気なのだろうと・・・
どうして私は、ずっとそう思っていたのでしょうか。

軽やかに刻まれた顔の線はそれだけで神がかり、
流れる様な縦の線、それを力強く支える横の線で明快に構成された体は、
そのままなにものかの魂を内包しているとしか見えませんでした。
そしてなんと艶やかなノミの跡!

あまりに印象が違うので、ここ埼玉に残る円空仏は特殊な時期のものなのかと、
ふと疑って帰宅してから調べてみましたが、
少なくとも2006年東博の「仏像 一木にこめられた祈り」で見たものと、
同じ作品が幾点もありました。
すると、私自身が変化したということでしょうか。
少しずつ、ちゃんと生きてきた証左であればいいと思いました。


現在に残る円空仏といえば、岐阜や愛知が有名だそうですね。
埼玉は実はその2県についで、数多く所在が確認されている県なのだそうです。
でもそのほとんどが、在所の小さなお寺やお堂、そして個人蔵。
お家の仏壇の横に大事に置かれていたりするそうで、
もちろん常時は非公開です。

それが、このたび埼玉県立歴史と民俗の博物館(旧埼玉県立博物館)の、
開館40周年を迎える節目として、県内諸所の協力で集められたそうです。
もちろん他県から出陳のものも多くありました。
展示は背面の見えるものもあり、板目や原木そのままの背がわかるなど、
170点という数とともに、大変おもしろいものとなっています。


私が気になったのは、
頭上面がどう数えても12ある「十一面観音菩薩坐像」と、
かつて子供の遊び道具だったため表面が摩滅してしまったという観音菩薩立像と菩薩形立像。
前者はお面の数の不思議とともに、お顔がとても可愛らしいのです。
後者はそのいわれの面白さと、それが高さ1メートル前後ある大きなもので、
これを子供たちがどう遊んでいたのか、非常に気になったのでした。

それからカラスのクチバシの様な三角形の顔面が印象的な各種神像。
名前は護法神像、稲荷神立像、秋葉大権現、迦楼羅神立像など異なっていましたが、
なんとなく同じ雰囲気を感じます。
禍々しいもの、禍々しいものへの畏怖、そして禍々しいものの調伏、
三者をひとつの身で表現したような雰囲気でした。


なお、1632年美濃国に生まれ、1695年に亡くなったといわれている円空が、
生涯のいつの時期に埼玉に来てこれらの作品を遺していったのか、
紀念銘入りの作品も、資料も伝聞も残らないためほぼわからないと言って良いそうです。
ただ、県東部、日光街道近辺に多く確認されていることから、
日光での活動との関わりが考えられているのだそうです。


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コメント 2

★ASA☆

円空には、僕もまるささんと同じ風に感じる様になってきました^^
その木の良さを生かした、必要最低限の彫り。
この境地に至るには、並大抵の事ではなかったでしょうね!

by ★ASA☆ (2011-10-14 23:11) 

まるさ

♪ ★ASA☆さん、そうなんです!
若い頃は雑に彫りまくったようにしか見えなかったのに、
今はまさに、必要最低限の彫り、と見えます。
ただ木目にそってノミを入れただけで、
衣に包まれた合掌する手や、
力強く踏み立つ足を表現できるなんて、
簡易でありながら、余人の真似できるものではないと、
思ってしまいます。
by まるさ (2011-10-15 01:07) 

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