川田幹 あすか菩薩 [美術館のある街]
東博の本館地下のミュージアムショップ。
ここが広くなって、華やかな様々の「グッズ」で溢れかえる様になったのは、
平成館が出来る前でしたか、後でしたか、それとももっと前からでしたか。
とっくに記憶にないのですが、その頃から気になっていた販売品があります。
川田幹 作
型染め版画
法隆寺献納宝物中四十八体仏シリーズ
ご本人、あるいは東博でこの様なシリーズ名をお使いになっているわけではありません。
便宜的に表現させて頂きました。
文化財の写真や意匠を使った文具・アクセサリー・衣類など様々な「グッズ」やレプリカの中にあって、
唯一このシリーズだけが、作者名を出した「作品」で、
しかも四十八体仏を題材にした、版画。
工夫を凝らしたお土産品も楽しいものですが、やはり本物の力はあまりにも峻烈です。
柱に掛けられている菩薩像を一目見るなり、喉から手が出るほど欲しくなる逸品でした。
でも、価格が小さなもので3、4万、横長で大きめの摩耶夫人像などは10万円を越えます。
とても、買えません。う~ん。
けれど、私が昔から仏像の中でも最も好きな一体、
166番さん(法隆寺献納宝物166号)の像が、もしあれば・・・
期待しつつも半ば不安に思いながら、意を決して係の方にお願いして、
倉庫で作品をすべて見せて頂いたのは、おそらく10年と少し前のことかと思います。
幸か不幸か、十数点程見せて頂いた中に166番さんはおらず、大出費はせずにすみました。
その後、川田幹さんの作品をネットオークションで探し続け、
2005年に安価でペラを落札、
当時東京駅の地下にあった(先日訪ねたらお店なくなっていました・・・)、
名前も忘れてしまいましたが画材屋さんで額装してもらったのが、
こちら。
題名には「法隆寺献納御物金銅仏並楽毅論」とあり、
光明皇后の楽毅論を背景にした、このお姿は・・・166番さんに間違いないです。
オークションで落札する時は、とにかく探しあてた感動と競りあいに夢中だったので、
実は何番の像かは気にもとめていなくて、
宅配で届いて箱を開けてしみじみ眺めてあっ!と思った時の感動は一入でした。
何か見えない力で私のところに来てくれた様で・・・。
以来、我が家の玄関に大切に飾らせて頂いています。
川田幹(かん)さん、書籍の装画にも多く携わられていますが、
ネットで調べてもなかなか情報が得られず、だいぶたってから、
大正13年のお生まれ、京都の染織家さんで、型染めという技法の版画を教えていらしたこと、
そしてそのお弟子さんのブログで、
私が東博で作品に出会った頃に鬼籍に入られたことを知りました。
お顔も、どの様な方かも存じ上げないのですが、
憧れ続けた作品の作者様です。
心よりご冥福をお祈りせずにはいられませんでした。
その後も、ネットオークションのサーチは続けていますが、
仏画の出品は今に至るまでありません。
何点かの風景画とだるまさんの画はお見かけし、
だるまさんは現在我が家の居間に掛かっています。
もともとどの様な経緯でネットオークションに作品が流れるのかわかりませんが、
亡くなられて時もたてば、かつての様な嬉しい出会いを望むのは無理なのでしょうか。
そう諦めていたのに。
先日、東博の「手塚治虫のブッダ展」に行った折、久々に地下のショップを覗くと、
えっ!?
思わず声をのみました。
今までのシリーズより少し小ぶり、背景も白く簡素ですが、
間違いなく166番さん(166号)です。
以前見せて頂いた時はなかったのに?と思い、店員さんにお聞きすると、
今年(2011)の1月から販売開始されたそうです。
そんなばかな!?
だって、もう亡くなってだいぶたつのに、新作が出るなど、
考えられるでしょうか?
いや、待て待て、先生の遺志を継がれたお弟子さんのお作かも!
・・・
落款を確認しましたが「幹」と読めます。
えー!?
それで、まるで素人で、買えるわけでもなくて恥ずかしい上に、
お忙しそうなところをご迷惑だろうと相当躊躇しましたが、
どうしてもそのままでは帰れずに、つい矢継ぎ早に質問してしまいました。
売り場の方はよくご存知なかった様で、奥から、
私より少しお若いくらいの素敵な女性が出てきてくださいました。
川田幹さん、日展の審査をしてらした画家さんで、
東博ミュージアムショップができた当初(40年ほど前?)の責任者の方と親しく、
その関係で、まだ権利関係がやかましくなかった頃、
お土産品ばかりではなく、きちんとした作品を売りたいということで、
作品制作ををお願いしたのだそうです。
その後「いろいろやかましくなり」この様な形での販売は無理になったのだそう。
それで、溢れる「グッズ」の中で唯一「作品」が扱われているわけと、
何故、この方の作品だけが?という謎が、解けました。
そして、驚いた「新作」は、
お恥ずかしながら、と前置きなさりながら、
最近館内の整理点検をしていて、この小ぶりな作品が何枚もあるのを発見したのだと教えて下さいました。
当初の責任者の方も今は亡くなられているので、
いつお預かりしたものかもわからないのだそうですが、
ご遺族にお詫びとお願いをして、今年から販売させて頂いているのだそうです。
なので、摺られたのは川田さんご生前。
間違いなく先生のお作です。
最後に、一番気になる質問を・・・
このお高いお値段で、売れるものですか?
我ながらなんと失礼なことをと思いましたが、
案に相違して、結構お求めになる方、お問い合わせされる方が多いのだそう。
亡くなった娘さんと同じ名前の如来像と出会い、運命だと思って買われた方とか、
どうにも気になって仕方ないので取り置いてほしいとお電話下さった方など、
私もそうですが、いろいろな思いの集まる作品の様です。
そんなわけで、166番さんはやはりどうしてもそのままにしては帰れず、
私が買わないで誰が買う!の思いで、買わせて頂きました。
ミュージアムショップでクレジットカードが使えたとは・・・ふ・・・。
ところで、この機会にと、その素敵な女性にもうひとつ疑問だったことを聞いてきました。
1,2年前から奥のガラスケースの中に鎮座している、
金銅如来立像の精巧なレプリカ、35万円。
(法隆寺献納宝物153号の像です)
これは、注文すればこの値段で166番さんも作って頂けるのでしょうか?(どきどき)
答えは「とんでもない!」でした。
20体作製したうち、残り販売可能数は1体になっているそうで、
(そんなに買える方がいらしたとは!)
近々更に20体作製するとのことですが、それを全部売ってやっと収支はとんとんに、
なるかどうか、なのだそうです・・・びっくりしました。
きちんとしたレプリカが、それほどお金のかかるものだったとは・・・。
もし、迷っている方がいらしたら、是非、ご購入下さい。
ちなみに、40体を売り切った時点で、
次も作るか、作るとしたらどの像にするか、決めるのだそうです。
166番さんを作って頂ける頃には、35万円くらい貯まって・・・いるといいな。
ショップの店員さん、主任の女性の方、お忙しいのにすみませんでした、
ありがとうございました。
大好きな166番さんを作品に遺してくださった川田先生、ありがとうございます。
大切に飾らせて頂いています。
ちなみに以前育児ブログの方で書いたことと多少重複しています、
そちらも見てくださった方には失礼しました。
ここが広くなって、華やかな様々の「グッズ」で溢れかえる様になったのは、
平成館が出来る前でしたか、後でしたか、それとももっと前からでしたか。
とっくに記憶にないのですが、その頃から気になっていた販売品があります。
川田幹 作
型染め版画
法隆寺献納宝物中四十八体仏シリーズ
ご本人、あるいは東博でこの様なシリーズ名をお使いになっているわけではありません。
便宜的に表現させて頂きました。
文化財の写真や意匠を使った文具・アクセサリー・衣類など様々な「グッズ」やレプリカの中にあって、
唯一このシリーズだけが、作者名を出した「作品」で、
しかも四十八体仏を題材にした、版画。
工夫を凝らしたお土産品も楽しいものですが、やはり本物の力はあまりにも峻烈です。
柱に掛けられている菩薩像を一目見るなり、喉から手が出るほど欲しくなる逸品でした。
でも、価格が小さなもので3、4万、横長で大きめの摩耶夫人像などは10万円を越えます。
とても、買えません。う~ん。
けれど、私が昔から仏像の中でも最も好きな一体、
166番さん(法隆寺献納宝物166号)の像が、もしあれば・・・
期待しつつも半ば不安に思いながら、意を決して係の方にお願いして、
倉庫で作品をすべて見せて頂いたのは、おそらく10年と少し前のことかと思います。
幸か不幸か、十数点程見せて頂いた中に166番さんはおらず、大出費はせずにすみました。
その後、川田幹さんの作品をネットオークションで探し続け、
2005年に安価でペラを落札、
当時東京駅の地下にあった(先日訪ねたらお店なくなっていました・・・)、
名前も忘れてしまいましたが画材屋さんで額装してもらったのが、
こちら。
題名には「法隆寺献納御物金銅仏並楽毅論」とあり、
光明皇后の楽毅論を背景にした、このお姿は・・・166番さんに間違いないです。
オークションで落札する時は、とにかく探しあてた感動と競りあいに夢中だったので、
実は何番の像かは気にもとめていなくて、
宅配で届いて箱を開けてしみじみ眺めてあっ!と思った時の感動は一入でした。
何か見えない力で私のところに来てくれた様で・・・。
以来、我が家の玄関に大切に飾らせて頂いています。
川田幹(かん)さん、書籍の装画にも多く携わられていますが、
ネットで調べてもなかなか情報が得られず、だいぶたってから、
大正13年のお生まれ、京都の染織家さんで、型染めという技法の版画を教えていらしたこと、
そしてそのお弟子さんのブログで、
私が東博で作品に出会った頃に鬼籍に入られたことを知りました。
お顔も、どの様な方かも存じ上げないのですが、
憧れ続けた作品の作者様です。
心よりご冥福をお祈りせずにはいられませんでした。
その後も、ネットオークションのサーチは続けていますが、
仏画の出品は今に至るまでありません。
何点かの風景画とだるまさんの画はお見かけし、
だるまさんは現在我が家の居間に掛かっています。
もともとどの様な経緯でネットオークションに作品が流れるのかわかりませんが、
亡くなられて時もたてば、かつての様な嬉しい出会いを望むのは無理なのでしょうか。
そう諦めていたのに。
先日、東博の「手塚治虫のブッダ展」に行った折、久々に地下のショップを覗くと、
えっ!?
思わず声をのみました。
今までのシリーズより少し小ぶり、背景も白く簡素ですが、
間違いなく166番さん(166号)です。
以前見せて頂いた時はなかったのに?と思い、店員さんにお聞きすると、
今年(2011)の1月から販売開始されたそうです。
そんなばかな!?
だって、もう亡くなってだいぶたつのに、新作が出るなど、
考えられるでしょうか?
いや、待て待て、先生の遺志を継がれたお弟子さんのお作かも!
・・・
落款を確認しましたが「幹」と読めます。
えー!?
それで、まるで素人で、買えるわけでもなくて恥ずかしい上に、
お忙しそうなところをご迷惑だろうと相当躊躇しましたが、
どうしてもそのままでは帰れずに、つい矢継ぎ早に質問してしまいました。
売り場の方はよくご存知なかった様で、奥から、
私より少しお若いくらいの素敵な女性が出てきてくださいました。
川田幹さん、日展の審査をしてらした画家さんで、
東博ミュージアムショップができた当初(40年ほど前?)の責任者の方と親しく、
その関係で、まだ権利関係がやかましくなかった頃、
お土産品ばかりではなく、きちんとした作品を売りたいということで、
作品制作ををお願いしたのだそうです。
その後「いろいろやかましくなり」この様な形での販売は無理になったのだそう。
それで、溢れる「グッズ」の中で唯一「作品」が扱われているわけと、
何故、この方の作品だけが?という謎が、解けました。
そして、驚いた「新作」は、
お恥ずかしながら、と前置きなさりながら、
最近館内の整理点検をしていて、この小ぶりな作品が何枚もあるのを発見したのだと教えて下さいました。
当初の責任者の方も今は亡くなられているので、
いつお預かりしたものかもわからないのだそうですが、
ご遺族にお詫びとお願いをして、今年から販売させて頂いているのだそうです。
なので、摺られたのは川田さんご生前。
間違いなく先生のお作です。
最後に、一番気になる質問を・・・
このお高いお値段で、売れるものですか?
我ながらなんと失礼なことをと思いましたが、
案に相違して、結構お求めになる方、お問い合わせされる方が多いのだそう。
亡くなった娘さんと同じ名前の如来像と出会い、運命だと思って買われた方とか、
どうにも気になって仕方ないので取り置いてほしいとお電話下さった方など、
私もそうですが、いろいろな思いの集まる作品の様です。
そんなわけで、166番さんはやはりどうしてもそのままにしては帰れず、
私が買わないで誰が買う!の思いで、買わせて頂きました。
ミュージアムショップでクレジットカードが使えたとは・・・ふ・・・。
ところで、この機会にと、その素敵な女性にもうひとつ疑問だったことを聞いてきました。
1,2年前から奥のガラスケースの中に鎮座している、
金銅如来立像の精巧なレプリカ、35万円。
(法隆寺献納宝物153号の像です)
これは、注文すればこの値段で166番さんも作って頂けるのでしょうか?(どきどき)
答えは「とんでもない!」でした。
20体作製したうち、残り販売可能数は1体になっているそうで、
(そんなに買える方がいらしたとは!)
近々更に20体作製するとのことですが、それを全部売ってやっと収支はとんとんに、
なるかどうか、なのだそうです・・・びっくりしました。
きちんとしたレプリカが、それほどお金のかかるものだったとは・・・。
もし、迷っている方がいらしたら、是非、ご購入下さい。
ちなみに、40体を売り切った時点で、
次も作るか、作るとしたらどの像にするか、決めるのだそうです。
166番さんを作って頂ける頃には、35万円くらい貯まって・・・いるといいな。
ショップの店員さん、主任の女性の方、お忙しいのにすみませんでした、
ありがとうございました。
大好きな166番さんを作品に遺してくださった川田先生、ありがとうございます。
大切に飾らせて頂いています。
ちなみに以前育児ブログの方で書いたことと多少重複しています、
そちらも見てくださった方には失礼しました。
2011-06-09 13:44
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コメント(2)
実は昨日(2015年3月)東博に行き、新しくなったミュージアムショップで川田幹さんの版画を発見、どんな作者か知らず一目惚れして購入しました。
私が買ったのは別のバージョンです。作者がどんな人か知りたくて検索したらここにたどり着きました。
ブログ拝見して、しみじみ「良いものを買ったな」と思いました。大切にしようっと。
by Oscar (2015-03-29 10:32)
♪ Oscarさん、はじめまして、いらっしゃいませ!
つたないブログを読んで頂いて、ありがとうございます。
平成館の一階に移ったミュージアムショップ、今も数点ずつ、川田さんの作品、展示販売されていますよね。
一目惚れされたとのこと、同じ想いの方がいらして嬉しいです。
川田さんのこと、wikiにもありませんし、思い切ってショップの方にお聞きして、自分の記録のためにもと書いておいてよかったと、なんだか感動してしまいました(笑)。
コメント、ありがとうございました。
by まるさ (2015-04-01 01:30)